今回は、書籍「DIE WITH ZERO」が提唱する「資産を使い切って死ぬ」という人生プランについて考えてみたいと思います。
「DIE WITH ZERO」とは?
書籍「DIE WITH ZERO」は、コロナ禍で「お金と時間の使い方」や「人生の有限性」が強く意識されたことにより、2020年後半〜2021年にヒットしました。
その後も資産運用やライフプランを考える層の間で継続的に読まれており、2023年以降もSNSやセミナーなどで再び取り上げられるケースが増えています。
著者のビル・パーキンス (Bill Perkins)氏は、米国のヘッジファンドマネージャーで起業家として成功を収めています。
書籍「DIE WITH ZERO」の内容を簡単に要約すると、人生の最後に財産がゼロになるように計画的に使い、人生を豊かにするという考え方です。
生涯をかけて貯蓄し、老後も使いきれずに終わるのではなく、やりたいことリストを作り、人生を豊かにする経験や思い出作りに積極的にお金を使い、健康で元気なうちに価値ある体験をすることを提唱しています。
日本の高齢者は実際どう考えている?
では、日本高齢者は遺産についてどのように考えているか、内閣府の調査を参考に見てみます。
令和6年度年次経済財政報告によると、「財産を使い切りたい34%」でした。
以下、老後の世話等にかかわらず財産を残したい31%、老後の世話等を条件に財産を残したい15%、社会・公共の役に立つようにしたいが3%という結果でした。
高齢者の4割弱が財産を残したいと考えていることが分かります。

別の調査、内閣府の令和6年度高齢社会対策総合調査を見てみます。
「財産は自分のために使いたい33%」となっており、令和6年度年次経済財政報告と同様の結果です。
「遺族等へ財産を残したい35%」の次に「残す財産がない24.5%」とありました。
こちらは複数回答ですので「残す財産がない」の中には「自分のために使いたい」も入っている可能性があります。

令和6年度高齢社会対策総合調査の中では、調査結果の分析・解説があります。
「高齢者の貯蓄取り崩し行動は非常に限定的で、純粋なライフサイクル仮説とは異なり、高齢者が金融資産を保有し続けているという。」
令和6年 高齢社会対策総合調査
日本の高齢者は、著書「DIE WITH ZERO」が提唱する「資産を使い切って死ぬ」を考えているのは多くないことが分かります。
その背景には、生活への不安感、遺産動機(遺産を残したい)の可能性があると指摘されています。
生活への不安の具体的な項目としては、
「物価が上昇すること」が74.5%ときわめて高く、以下
「収入や貯蓄が少ないこと」
「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」
「災害により被害を受けること」
などがあげられています。
「資産を使い切って死ぬ」というのは、著者のビル・パーキンス氏のように起業家として成功し富を得て、将来の経済的な不安がない場合の考え方かもしれません。
相談現場での感想
私も金融機関での相談会顧問を務めていますが、70歳になろうが、80歳になろうが「お金を貯めたい・増やしたい・備えたい」とおっしゃる高齢者の方がほとんどです。
CF的にも資金ショートする恐れのない方も同じようにおっしゃいます。
中には資産を増やすことをゲームのように楽しんでいる方もいらっしゃいますが、やはり前述のとおり経済不安をかかえる方が多くいらっしゃいます。
論点を変えて「健康で元気なうちに価値ある体験をしておけばよかったという後悔はありませんか?」という趣旨の質問をすると、おどろくべきことに「ほとんど後悔はなく、もっと貯蓄をしておくべきだった」とみなさんが答えます。
もしかしたら現在の高齢者の価値観かもしれません。
しかし、戦後の高度成長期のような時代にならない限り、今の若者世代が高齢者になったとしても経済不安は払拭されない気がします。
「資産を使い切って死ぬ」が否定される別の理由として、「お金のない高齢者は相手にされない・大切にされない」とおっしゃる方は大変多いです。
なんとなく分からないでもありませんが・・
余談ですが、私が作成するCFは100歳になっても資産残高がゼロにならないよう、アドバイスをして作成しています。
金融機関での相談会顧問となる前までは「CFが100歳でゼロ」はアリだと考えていました。
まさしく「DIE WITH ZERO」ですね。
しかし金融機関の相談会で、まさに高齢期を過ごしているお客様のリアルなお考えを聞いてからは、お客様が考える希望額が残せるようなCFを作成しています。
「死ぬまでに資産を使い切りたい」と素直に考えることができる人は幸せな人かもしれません。

